あっさりした内容
かなり期待して読んだのですが、割にあっさりした内容で
少しばかり肩すかしを喰った感じです。
心理的な描写や背景的な物は殆ど無く、淡々とある特定時期の
戦闘の状況が書かれています。
もう少し突っ込んだ内容ならよかったんですが・・・・。
岩本徹三の「零戦撃墜王」のようなものを期待されると
少々ガッカリするかも。
手に汗握る、では陳腐か?
大東亜戦争さんも書かれていたように、臨場感溢れる「武士(もののふ)」の戦場に圧倒されます。
同じ光人社の『ドイツ本土戦略爆撃』が、英米独の航空機の性能や作戦の記述に留まり、
また両国とも未熟ながらレーダーを持っていて、それを用いた戦闘だったが
こちらの屠竜は探照灯の明かりだけを頼りに追撃、攻撃しているさまは
地上からも眺められたわけで、まさに迫真です。それから、37ミリ砲を装備した
戦闘機がホンマに撃墜できるのか? という素朴な疑問を、一瞬で吹き飛ばしました。
彼我の戦力に圧倒的な差がありますが、もし、屠竜部隊があと10もあったら
本土は丸焼けにならなかったのではとさえ思いました。
一機の月光が斜め銃で、一晩にB29を5機撃墜した記録も読んだことがありますが、
日本の双発戦闘機の性能は、ドイツに負けないものだったように思います。
とにかくスゴイ。
ただ、カバーのイラストがB29だけなのがとっても残念です。
模型ファンには屠竜の機首をガラス張りにしているトンマなモデルを作る人もいますので
いま一度、紫電改や雷電、月光ばかりでなく、屠竜に注目する人々が増える事を祈ります。
B29 26機撃墜の空の勇者
陸軍のB29撃墜王である樫出勇大尉の二式複座重戦闘機「屠龍」による壮烈なる空戦記録です。陸軍航空は海軍航空の華々しさの影に隠れて、一般にはあまり知られていません。本土防空に活躍され、あの「超空の要塞」B29を26機も撃墜した空の勇者が書き綴った迫真の空戦記録。B29を26機撃墜とは・・・。小型機の撃墜王とは、まったく違う凄まじい記録です。豊富な経験談だけに、その空戦描写は、あたかも読者がその修羅場にいるかのような臨場感をもっており、激しい戦闘の様子が容易にイメージできた。 戦闘の様子は実に詳細に書かれおり、本書の大半以上を占めているが、戦争そのものや政治に関するものは何一つなかった。「命を的に戦ったわれらの戦争はいったい何だったのか?よくわからないと言わざるを得ない」としている。まさしく戦闘機一筋の人であり、戦後も苦労したようだが、「人生において、B29撃墜よりも難しいことはない」と語られているのが印象的でした。機銃の弾幕の中を「忍」の一字で耐えながら突っ込み、激突直前の数十メートルまで近接、自慢の37ミリ砲をぶっ放す・・・。一撃必殺。 屠竜に搭載された37ミリ対戦車砲の威力には度肝を抜かれた。一撃でB29を屠るとは・・・まさにその名のごとく竜を屠る重戦闘機だ。 また屠竜には20mm上向き銃(海軍では斜銃という)も搭載されているが、海軍の「月光」などでは主装備であるにも関わらず、ほとんど使用しないと書いてあったのも意外でした。事実、発射したという記述は一切ありませんでした。 B29に体当たりして同時にニ機撃墜の大戦果をあげた野辺軍曹。たとえ国土防衛のため、同胞、家族を守るためとはいえ、どのような心境だったのだろう。戦果が上がらず責任を感じていたようだが、その凄まじい闘魂と責任感には脱帽する意外にない。このような先輩方の屍の上に、今我々の生活はあるのだとつくづく感じる。
光人社
空戦 飛燕対グラマン―戦闘機操縦十年の記録 (光人社NF文庫) 艦爆隊長の戦訓―勝ち抜くための条件 (光人社NF文庫) 彗星夜襲隊―特攻拒否の異色集団 (光人社NF文庫) 空母零戦隊 (文春文庫) 死闘の本土上空―B-29対日本空軍 (文春文庫)
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